Ⅱ.防災教育
1.校区と地域の現状
元小学校は、目前に海が迫り、周辺よりは少し高い海抜12.7mに位置してはいるが、それで も室戸市防災マップでは3~5m浸水することが想定されている。このように南海トラフ地震 を考えた場合、立地条件としては非常に津波被害の危険度が高く、津波発生時には校区全体に 甚大な被害がでることが想定されている。
これまで本校では、南海トラフ地震に対して、いろいろな想定での避難訓練や元保育所との 合同避難訓練などを行っている。しかし、高齢化が進む地域の中にあって、学校として地域の 自主防災組織や消防分団等と連携した防災の取組は、まだ十分ではない。そこで、元地区では 学校を核として、児童、PTA、地域、行政が一体となって連携の輪を構築していくことが必 要だと考えられる。
そして、そのような取組を進める中で、児童に「地域社会の安全に貢献できる力」や「自ら の命を守りきる力」を育てることをめざしたいと考えている。
2.実践的防災教育推進事業の目的と取組内容
○平成28年度・29年度の2年間の継続事業である。これを機会に元小学校の防災教育の充
実と児童の防災力を高めること、また、地域と連携した防災体制づくりをねらいに、研究推
進校として取り組む。
○拠点校として、⑴多様な避難訓練や⑵防災に関する指導方法の開発・普及、⑶「高知県安
全教育プログラム」に基づく実践的な防災教育に取り組む。
⑴効果的な避難訓練の実施
①様々な想定での避難訓練の実施
②保育所と連携した避難訓練の実施
③地域の防災組織と連携した避難訓練の実施
・実践委員会の設置
⑵防災に関する指導方法の開発・普及
①「高知県安全教育プログラム」を基にした指導方法の開発・実践
②「学校安全計画」の見直しや「防災教育全体計画・年間計画」の作成
③防災学習と避難訓練を効果的に関連付けた取組の実施
④指導案の検討、授業公開等の防災授業研究会の実施
⑤事前・事後のアンケートによる児童及び保護者の防災意識調査
⑥研究発表会の開催(全学年の公開授業、研究協議、児童発表(講演会)等
⑦県主催の研修会等での実践発表
◎元小学校の特色を生かす防災教育実践の柱
⑴ 少人数の教職員体制の中で、いかに児童の命を守る防災体制・組織を構築するか。
⑵ 児童一人一人が、自らの命を守るための正しい判断と行動ができるようになるための、複式学級での防災教育の授業づくり(内容、指導方法等)
⑶ 地域・関係機関と連携した防災教育の推進と地域と連携した防災体制の構築
◎元小学校のめざす防災力
「東日本大震災を受けた防災教育・防災管理等に関する有識者会議」の中間とりまとめ(平成23年9月)では、「災害発生時に、自ら危険を予測し、回避するためには、自然災害に関する知識を身につけるとともに、習得した知識に基づいて的確に判断し、迅速な行動を取ることが必要である。その力を身に付けるには、日常生活においても状況を判断し最善を尽くそうとする『主体的に行動する態度』を育成することが必要である」と述べられている。
児童が、防災について学び、それを主体的に実践することで、被害が発生するリスクを軽減したり、回避したりすることにつながる可能性が高いといえる。
3.自分の命を自分で守る防災力の育成について
児童の防災力を考えた場合、その身につけさせ方には2つの場合があるように思われる。1 つは、「教えてできるようにすること」である。もう1つは、「知識や経験を活用して、自ら判 断して行動できるようにすること」である。この差異を意識した防災学習や避難訓練を計画し 実施していかなければ、本当の意味での自分の命を自分で守る防災力にはつながらないと思わ れる。
⑴防災指導:「こういうときは、こうしなさい」と教え、訓練や体験を通してできるようにする。
⑵防災学習・避難訓練:学習した知識を活用して、自らが判断して適切な行動をとる。
4.研究仮説
「防災に関する基礎力や避難訓練などを通して体験知を身につけさせながら、状況に応じて それらを参照してどのような行動を取ればよいかを判断できるようにすれば、自らの命を守 る力を高めることができるであろう。」
(正しい知識や体験知の習得→知識と体験知にもとづく判断→正しい行動→自分の命を守る)
5.元小学校の取組内容
⑴児童・保護者アンケートを実施し、現状分析や課題把握を行うとともに、児童・保護者
の防災意識を把握する。
⑵多様な想定での避難訓練と保小合同避難訓練を実施し、防災学習と避難訓練を効果的に
関連付ける指導の在り方を探る。
⑶学校安全計画や防災マニュアルの見直しと教職員による共通理解を図り、学校の防災体
制を強化する。
⑷地域性や高知県安全教育プログラムを基にした防災教育全体計画や年間指導計画を作
成する。
⑸先進校視察などを行い、先進的な実践に学びながら元小学校ならではの防災カリキュラ
ムをつくる。
⑹実践的防災教育研究発表会では、全クラスの公開授業や防災講演会を実施し、本事業成果の 普及に努める。