「盲学校からのメッセージ」  これを読んだあなたが、見えない人や見えにくい人と一般社会とのかけはしになってくれることを願います。   高知県立盲学校 視覚障害教育支援センター   2015年11月発行 1.点字って何?  点字は視覚障害者の「文字」です。主に指を使って読み、点字器などの道具を使って書きます。1マスは6つの点からできています。6つの点を様々に組み合わせたりマスをいくつか使うことによって、日本語のかなだけでなく数字やアルファベットも表すことができます。 点字の歴史  1825年 パリ訓盲院の生徒ルイ・ブライユ(1809〜1852)は、6点式の点字を考案してアルファベット、数字を完成させました。日本の点字は1890年11月1日(日本点字制定の日)、東京盲唖学校教員・石川倉次(いしかわくらじ)(1859〜1944)の考案したものが使われています。 ※写真の説明「指で点字を読んでいます。」 浮き出している点(凸面)を指で読んでいます。 ※写真の説明「ア行、カ行、ハ行の点字表記です。」 点字の構成1  点字の五十音(清音)は、母音を表す部分と子音を表す部分の組み合わせによって構成されており、ア行やカ行などの行ごとに規則的になっています。 ※写真の説明「バ行、パ行の点字表記です。」 点字の構成2  点字の組み合わせは、63通りしかないので、全ての文字を表すことができません。そこで濁音や半濁音などは清音の前に決められた点を書き、2つのマスを使って表します。 ※写真の説明「缶の上面にお酒と点字表記があります。」 ※写真の説明「洗濯機の押しボタンの点字表記です。」 ※写真の説明「郵便ポストの点字表記です。」郵便ポストの投入口です。  点字は、私たちの身のまわりにたくさんあります。身近な物では、洗濯機や炊飯器、郵便ポストやお酒の缶、自動販売機など、建物の中ではエレベーターや切符売り場、公衆電話や公衆トイレ、ATMなどにもあります。他にも、どんな物があるか探してみましょう。 2.クロックポジション  クロックポジションとは、部屋や施設、または卓上の位置関係を説明する際、時計の文字盤に置き換え、12方向で示します。実際に卓上の物の配置を示すときは、視覚障害者の手前中心を6時の位置とした時計の文字盤を描いて説明します。 ※写真の説明「配膳された給食の写真の周りに時計の文字盤のイラストがあります。」  (例)6時の位置にお箸、7時の位置にご飯、9時の位置にひじきサラダ、11時の位置に牛乳、12時の位置にお茶、2時の位置にポークソテー、4時の位置にスープがあります。 ※写真の説明「アイマスクをした人がコーヒーを注いでいる写真です。」  部屋や施設の位置関係を説明する際、会場の中や周囲の説明をするときには視覚障害者を針の中心(基準)にして正面が12時、真後ろが6時の時計の文字盤を描いて説明します。また、単独で過ごす可能性のある部屋の場合は、出入り口を基準にして部屋の形や大きさなどを説明し、各壁にある主なものも併せて説明します。 ※写真の説明「見取り図です。入り口から見ると縦長の長方形のホールです。入り口の向かい側にステージがあります。中心に赤い丸の基準があります。」  クロックポジションによる位置の説明 (例)基準に立った状態で「12時の方向にステージ、5時の方向にトイレがあります」  クロックポジションは視覚障害者に目の前の状況を説明する場合にとても有効な手段です。食事や周囲の環境を説明する場面等で積極的に活用し視覚障害者が安心して生活できるようサポートをお願いします。 3.視覚障害者誘導用ブロック  点字ブロックの正式名称は「視覚障害者誘導用ブロック」です。足裏の感覚で認識できるように点や線の突起をつけたもので、2種類あります。視覚障害者を安全に誘導するために道路や床面に敷設されています。 ※写真の説明「線状誘導用ブロックの写真です。」 線状誘導用ブロック  進行方向を示すブロックです。ブロックの線を足裏や白杖で確認しながら歩くことができるように設置されています。電車通りや歩道に設置されています。 ※写真の説明「点状誘導用ブロックの写真です。」 点状誘導用ブロック  危険箇所や誘導対象物等の位置を示すブロックです。注意を示すブロックです。階段前、横断歩道前、バス停、誘導ブロックが交差する分岐点、案内板の前、障害物の前、駅のホームの端、エレベーター前等に設置されています。  使いづらい誘導用ブロック こんな誘導用ブロックは使いづらい! ※写真の説明「タイル張りの歩道にタイルと同じ大きさの点字ブロックが敷設されています。歩道と点字ブロックが同系色です。」  触覚的コントラスト、色のコントラストがない。路面のレンガと誘導用ブロックの大きさ、質が同じである。単純でめりはりのあるガイドラインが必要な視覚障害者にとっては、最も分かりにくい例。白杖からの情報として斜めのガイドラインは迷いの原因にもなる。コントラストが分かりにくく、視覚的情報として誘導用ブロックを利用している弱視者にとっても認知しづらい例。 ※写真の説明「点状誘導用ブロックが壊れている写真です。」  壊れて障害物化したブロック ※写真の説明「階段状に張り巡らされた点字ブロックです。」  情報量が多すぎるとかえって迷いの原因になる  視覚障害者誘導用ブロックを利用して目的地まで歩いている盲導犬ユーザーや白杖歩行の視覚障害者はたくさんいます。ブロックを頼りに歩いているため、この上に自転車やバイク、車、看板等があるとたいへん危険で不安を感じます。その点をご理解いただき視覚障害者が歩きやすい環境作りにご協力をお願いします。 4.視覚障害者のガイド  白い杖を持って困っている方を見かけたら、勇気を出してひと声かけてみませんか?  白い杖は、白杖(はくじょう)といわれており、視覚障害者にとっての大切な補装具です。 ※イラストの説明「手引きしているイラストです。」 基本の方法  まずは一声、「こんにちは。」「何かお困りですか?お手伝いしましょうか?」 (1)ひじか肩を貸しましょう。 (2)半歩前を歩きましょう。 (3)二人分の幅を確保しましょう。 ※写真の説明「白状を持っている人が横断歩道の手前で止まっている写真です。」 「今、青かな?」信号の変化に気付かず、なかなか横断できない。 ※写真の説明「バス停の手前で迷っている写真です。」 「音が聞き取れないよ」混雑して、点字ブロックがふさがれている停留所 ※写真の説明「工事中で点字ブロックが塞がれている写真です。」 ふだん歩きなれている道でも、工事中は??  思いやりのひと声を! ※写真の説明「盲導犬ユーザーがバスに乗っている写真です。」  混雑したバス等に、一人で乗車してきた方には空いている席を教えてあげてください。  視覚障害者は、いつも困っているわけではありません。通学・通勤等で通い慣れている道であれば、「大丈夫です。」という答えが返ってくることもあるでしょう。その時はご理解ください。勇気を持って声をかけた方の「思いやり」は、しっかりと伝わっています。困ってしまうのは、手がかりを失った時や初めての場所です。今いる位置、探している場所、方向、周囲の状況等、情報の入手がしにくい時のひと声はとても助かるものです。 5.代筆・代読  代筆とは視覚障害者本人に代わって書くことをいいます。 ※写真の説明「代筆を行っている写真です。」  代筆をする場合、誤字脱字がないように楷書で丁寧に書きましょう。 (1)書類に眼を通す。 (2)記入する項目や内容を伝える。 (3)周囲に配慮して聞き取る。 (4)本人の意思に添い正確に記入する。  代読とは視覚障害者の眼の代わりとなって読むことをいいます。 ※写真の説明「代読をしている写真です。」  代読者「上から順に読みますか?どのように読みましょうか?」視覚障害者「まず、項目を教えてください。」 (1)書いてある内容を正確に伝えるように読みましょう。 (2)自然に聞こえる読み方が聞き取りやすい読み方です。 (3)内容によって読む方法が異なります。どういう方法で読んだ方がよいか確かめてから読みましょう。  役所など窓口担当者とのやりとりは、本人が直接できるように配慮してください。金融機関では間違いや勘違いをなくすためお金の出し入れは窓口担当がいるところで行います。代筆者や代読者が視覚障害者の眼の代わりになって書いたり読んだりします。自分勝手な解釈や感情を入れて書いたり読んだりすることのないように注意してください。また、視覚障害者に希望を聞きながらサポートすることを心掛けましょう。 6.弱視の人の見え方  視覚障害は、「見えない」「見えにくい」状態で、大きく全盲と弱視とに分かれます。弱視の人の見え方は、一人一人違いがあります。 通常の見え方 ※写真の説明「6人が写っている写真です。」 白濁 ※写真の説明「全体が白っぽく、6人がはっきり見えない写真の例です。」  まぶしさを感じるため、白黒反転すると見やすくなります。全体はぼんやり見えますが、細かいところが見えにくくなります。例、白黒反転するとわかりやすい。 中心暗転 ※写真の説明「真ん中が黒く抜けている写真です。」  中心に見えにくい部分があるため、近くで見るほど暗転部分が小さくなり、かくれていたところが見えてきます。例、拡大するするとわかりやすい 視野狭窄 ※写真の説明「真ん中の部分だけが見えている写真の例です」  見える範囲が狭くなり、文字の読み書きや歩行にも影響があります。欠けている部分により見え方も違います。少し離れてみると視野が広がり見やすくなります。例、拡大しない方がわかりやすい。  見え方もいろいろです。配慮の方法も様々です。弱視者は見えている分、周囲が見えにくさに気づきにくいところがあります。視覚障害に対する理解を深め、環境を整えていくことで、見えにくさのある人が生活しやすくなります。 7.視覚補助具  視覚補助具とは、弱視の人の「見えにくさ」を「見やすくする」ための道具です。補助具には多くの種類があります。それぞれに長所や短所がありますので、見え方や学習内容に合ったレンズを選ぶために専門的な立場の人に相談し、検査をした上で選定してもらうことが大切です。 ※写真の説明「ルーペを使ってプリントを見ている写真です。」 ※写真の説明「ルーペの実物の写真です。」  ルーペ  机上の本の文字など、近くを見るための補助具です。 ※写真の説明「単眼鏡を使って黒板の文字を見ている写真です。」 ※写真の説明「単眼鏡の実物の写真です。」  単眼鏡  遠くを見るための補助具です。黒板や信号機、バスの行き先や時刻表などを見るのに使います。 ※写真の説明「拡大読書器を使って教科書を読んでいる写真です。」  拡大読書器  拡大読書器は通常の文字を拡大してモニター画面に映し出して見る補助具です。拡大したり、ピントを合わせることも簡単に調節でき、楽な姿勢で読み・書きができます。種類は、据え置き型や携帯型があります。 ※写真の説明「所見台を使ってプリントを見ている写真です。」  所見台  プリントなどに目を近づけて、長時間の学習や作業をする場合に良い姿勢を保つための補助具です。学習しやすい姿勢が保持できます。  ルーペや単眼鏡などの補助具は、見えにくさを補い不便さを軽減してくれますが、効果的に活用するためには練習が必要です。視覚障害者にとって便利な補助具はたくさんありますが、周りの人の理解や声かけなどの優しいサポートが大切です。 8.ユニバーサルデザイン  ユニバーサルデザインとは、できるだけ多くの人が利用可能なデザインで視覚障害者でもわかりやすい使いやすいもののことです。  ユニバーサルデザインの7原則は (1)どんな人でも公平に使える (2)使う上での柔軟性がある (3)使い方が簡単 (4)必要な情報がすぐにわかる (5)うっかりミスを許容できる (6)身体への過度な負担がない (7)アクセスや利用のための十分な大きさと空間の確保です。  ここでは、視覚障害者「全盲」や「弱視」の人にも使いやすいものを紹介します。 ※写真の説明「コントラストの付いた床面の写真です。手洗い場まで誘導しています。」  弱視者に分かりやすい誘導ライン  弱視者に対しては、入り口から洗い場までを色のコントラストで誘導し、全盲者に対しては左側壁の突起物を目印として手洗い場まで行くことができ、バリアフリーなので躓く心配もなく安全で、かつ全盲、弱視の両者に分かりやすいデザインとなっています。 ※写真の説明「白黒反転の分度器の写真です。」  弱視用分度器  弱視者にとってはコントラストがはっきりしており、中心と基準線の取り方が分かりやすい。分度器を初めて学習する子どもは、中心の取り方と、基準線の位置合わせで苦労するが、そうした子どもたちにとっても分度器の使い方が理解しやすいデザインとなっています。 ※写真の説明が4枚あります。「電気のスイッチ・リモコン・シャンプーとリンス・牛乳パックの写真です。」  視覚障害者「全盲」や「弱視」の人にとっては、「手で触って違いが分かる」「音で聞いてスイッチのオン、オフの違いが分かる」ものは使いやすく便利です。私たちの日常の中にはたくさんの「ユニバーサルデザイン」が隠れています。誰にとっても使いやすいものについて考えてみましょう。あなたの身近でも探してみてください。 ※写真の説明「盲学校の周辺の地図の写真です。」 高知県立盲学校 視覚障害教育支援センター 〒780−0926 高知市大膳町6−32 TEL 088-823-8721 FAX 088-873-9643 e-mail mo-s@kochinet.ed.jp 編集責任者 視覚障害教育支援センター理解啓発担当