2020年度支援学級

「学童保育と連携した野菜の底面給水養液栽培の実践」

※本実践は、第20回 ちゅうでん教育振興助成(2020年度)を受けて実践したものです。

1.はじめに
今回の活動・研究は、小学校と学童保育との交流・協働にて、プランター等による簡単な底面給水養液装置を自作し、養液のみによって野菜を育て、今後、収穫した野菜を、保護者や地域の方々、市内の教育機関や行政・保育所等に販売し、その一部を校外学習等の経費として活用して、支援学級児童(以下、児童と言う)の社会性の向上を目指す学習に活かすことを目的として取組を行った。また、児童が収穫後、調理することなどを通して、将来の生活力の向上や、他の学年等と児童が交流を行うことで、障がい者理解を深めるきっかけを作ることができると考えた。
さ らに、学童保育との交流・協働して栽培した野菜の一部は、「子ども食堂」等への食材として提供を行う予定である。そして野菜の栽培管理においては、ICTを活用し管理の省力化にも取り組み、ひいては、地域の就労課題等に対して、野菜の栽培において、その課題解決に取り組めるのではないかと実践を進めた。

2.活動・実践内容について
4月まず、既存の資材を活用し、学級園に支援学級用(間口2.6m×奥行6m)と学童保育用(間口2.2m×奥行4m)のビニールハウスを自作した。1学期は、そのハウス内で、土耕栽培にてミニトマト36本を育て、校内の先生方や保育園の先生方に販売することができた。
また、合わせて児童と一緒に底面給水栽培プランター作りに取り組み、プランターに電動ドリルで横穴を開け、アルミ保温シートや不織布を必要な大きさにハサミで切り、ガムテープでプランターに張るなどの活動を行った。
児童と作ったプランターは、全部で38プランターである。32プランターは、学級園用で、残りの12プランターは、学童用に作ることができた。

(1 ) 既存ビニールハウスの設備拡充とイチゴ栽培について
夏休みから9月中旬にかけて、助成金を活用し、イチゴのプランター台をハウス内の北側側面に、東西方向に一列に6個で、3段設置できるよう、鋼管パイプにて栽培用の棚台の組み立てを行った。
その後、9月中旬から下旬にかけて、近くの園芸店で購入したイチゴの苗を、児童と一緒にポットの土を水で洗い、1プランターに3株ずつ植え付け、プランター台に設置して栽培をはじめた。
10月には、ビニールハウスサイドの換気機能の拡充をするために、ビニールウス側面の両側に巻き上げ式の手動換気装置を設置した。また、ハウス東側上部には、サーモスタットにより温度管理し、設定温度になると換気扇を回して、イチゴの生育適温に近づけるため、側面の換気と合わせてハウス内の高温対策を行った。
イチゴは、植え付け約2ヶ月後の11月下旬ごろより花が咲き始めたので、児童による小筆を使っての受粉作業を行い、12月下旬に初収穫を迎えた。今年度は、コロナ禍で調理実習ができなかったが、簡単に市販のマフィンにクリームとイチゴをのせて味見することができた。
その後のイチゴ栽培は、ハウス天井部の補強と合わせて保温のために内張をして、以前校内で使用していたオイルヒーターによる加温と電照用にLED電球を設置した。ヒーターは換気扇同様サーモスタットよって夜間と早朝に加温し、電照はタイマーにより夕方から夜間にかけて3時間ほど行い栽培を続けた。そして、現在2月下旬では、第2果房を収穫と3番果房の花芽が咲き始めている。また、栽培途中で、ヨトウ虫の食害やアブラ虫の被害が出てきたので、防虫シートの設置やアルミ箔をイチゴの株元に敷いたり、ミカンの皮を置いたりして予防するとともに、てんとう虫を児童と一緒に見つけては、ビニールハウス内に入れ、少しでもアブラ虫等の被害を少なくする取り組みを行い、引き続き校内等で収穫・販売中である。

(2) その他の野菜の栽培について
また、ビニールハウス中央と南側には当初75cmプランター6個置いて栽培する予定であったが、取り急ぎ、ハウス中央部には、スナップエンドウを土耕栽培した。11月中旬からは収穫がはじまり、2月中旬まで収穫して校内等で販売することができた。
同じビニールハウスの南側には、ソラマメの底面給水栽培を行うためにプランター台を設置して、栽培を行ってきたが、1月中旬ごろから花が咲き始めるとアブラ虫が付きはじめ、2月下旬の様子では、収穫にまでは難しい状態である。
また、スナップエンドウ収穫後は、底面給水栽培用に75cmプランター6個の設置台を作り台の上に設置し、児童が種まきしたキュウリを、衣装ケースと熱帯魚ヒーターを利用した保温ケース内で発芽させ、先日植え付けを行い、夜間と早朝には、ビニールをかけて保温している。
ま た、露地においては、学校園で他学年が使用していない場所を利用して、レタス、タマネギ、カブ、春菊なども児童と一緒に種まきして栽培し、レタス、春菊などは現在収穫・販売中である。まもなく、極早生タマネギも収穫・販売できる予定である。

(3) 学童用ビニールハウスについて
11月下旬からは、2学期中断していた学童用のビニールハウスに側面換気や天井補強、天井部保温用内張、プランター台などの設備を作り、今まで学童の先生達が露地栽培していたイチゴプランターをハウス内に入れて栽培を続けている。その後、だんだんと温かくなってきた2月中旬には、支援学級のビニールハウス内にて栽培していた学童用イチゴプランター11個を、学童用ハウスに運び、児童が受粉作業などしながら栽培を続けている。

(4) 連棟ビニールハウス作りについて
1月上旬からは、当初より計画していた校舎東側の畑に、土耕栽培用のビニールハウス作りをおこなった。ビニールハウスは、当初の計画では、東西に間口2.8m×奥行10mの単棟ハウスの計画であったが、日当たり等の関係で計画を変更し、向きを南北にして東棟は間口2.8m×奥行き5.5m、西棟は間口2.8m×奥行6.5mの連棟ハウスを作った。
ビニールハウスは、東側・西側・南側に側面手動巻き上げ換気を設置すると共に、ハウス内への出入口として、東棟と西棟それぞれ北側に引き戸を取り付けた。そして、天井部には、他のビニールハウス同様に、天井部補強と合わせて保温用に内張ビニールを張っている。
今後気温が高くなると、先日児童が種まきして育苗したピーマンの苗を東棟に2畝、ミニトマトの苗を西棟に2畝植え付けして栽培する予定である。また、連棟している中央部の東面と西面には、来年度の活動としてプランター台を設置して底面給水栽培ができたらと考えている。

3.おわりに(実践を振り返って)
野菜作りは、種まき・育苗、植え付け、日常の世話、収穫・販売などの活動があり、季節ごとに栽培する野菜も違い、生命の成長なども感じられた。また、収穫すれば、計量・袋詰め・ラベル貼り・販売と、多岐にわたる活動があり、児童の実態に即した活動が仕組みやすかった。そして、販売場面では金銭の授受等も含めて、児童のコミュニケーション能力を高めると同時に、金銭感覚を養うことができる。
今年度は、コロナ禍と言うこともあり、販売したお金で校外学習等はできなかったが、児童作品の制作に使う教材費等を購入することができ、6年生は卒業制作として木の椅子を作成中である。
また、学童との連携については、日ごろのビニールハウスの管理やイチゴの受粉、生産物の販売などとして交流できた。一方、「子ども食堂」への食材提供については、今年度11月18日に開催されたが、その際には野菜の成長が間に合わず、次回、3月21日開催の際に極早生タマネギを提供する予定である。
一方、課題としては、既存ビニールハウス内のプランター台や換気装置の増設、校舎東側の連棟ハウスづくりとほぼ計画通り進めることができたが、野菜の成長に伴うお世話と重なり、かなりハードな面もあった。当初、子ども達と授業の一環として、ビニールハウスも作る予定であったが、児童の実態を考慮し、放課後や休日に作ることが多くなった。そして、日ごろの管理にICTを活用することや給水設備ついては、作成する時間と予算の確保が必要であるので、これも引き続き次年度へ持ち越した課題である。
しかし、今回助成をいただいたことで、ビニールハウスを活用して、一年を通して野菜栽培ができ、児童の活動の幅も広げられることができた。次年度においても助成を計画し、引き続き課題解決のための実践を行いたい。