全ての児童生徒が、安心・安全に学校生活を送るために、全教職員がいじめについての基本的な考え方を共有し、いじめは絶対に許さないという考えのもとで、すべての教育活動を行う。そしていじめの未然防止に向けて、「いじめ防止対策委員会」で検討された指導方針をもとに、各教科や総合的な学習の時間、道徳や特別活動や学校行事等を通じて、いじめをしない、させない、ゆるさない集団づくりを行っていく。その際、特に人権教育と関連させて取り組みを行っていく。また、いじめをゆるさないという感覚を、教職員だけでなく児童生徒や保護者にも啓発していくことが大切であり、学校と家庭とのより一層の連携を図っていく。
2 いじめの防止のための措置
(1) 日頃からいじめについての共通理解を図るため、教職員に対してはいじめに対する考え方や未然防止の実施方法、いじめ事案への対応方法等について校内研修を実施する。児童生徒に対しては、いじめをしない、させない、ゆるさない集団づくりを実施する。
※いじめに関するアンケート調査の実施
※あたたかい学級づくりQ−U調査の実施(5月・11月の2回実施)
(2) いじめに向かわない態度・能力を育成するために、自他の存在を認め合い、尊重し合える態度を養うことや、児童生徒が円滑に他者とコミュニケーションを図る能力を育てることが必要である。
そのために、学校行事や特別活動、総合的な学習の時間等を通じ、児童同士がコミュニケーションを図る場面を積極的に作るなど、学年に応じた多様な活動方法を検討し実施する。
(3) いじめが生まれる背景を踏まえ、指導上の留意点としては、教育活動全般において、児童生徒の様子を観察し、その様子を踏まえて常に教育活動を改善して行くことが肝要である。
○分かりやすい授業づくりを進めるために、授業づくり部会及び学力支援を中心に「わかる授業」づくりを目指した授業方法の研究や研修会を行い、絶えず研鑽と修養に努め実践する。
○児童生徒一人ひとりが活躍できる集団づくりを進めるために、なかまづくりや自主活動の工夫をする。縦割り班活動をとおして異学年交流も進めて行く。
○ストレスに適切に対処できる力を育むために、相談活動やカウンセリングに努める。
○いじめを助長するような教職員の不適切な認識や言動等、指導の在り方に注意を払う
ため、校長、教頭、各主任等が教職員の日常の教育活動について、連携、協力する。
また、教職員同士が授業等をお互いに観察し、適切な指導助言を行う。教職員の不適
切な言動等がないように校内研修会を実施する。
(4) 自己有用感や自己肯定感を育むために、授業で児童生徒一人ひとりが活躍できるような場を作る等、日々の授業での活動を考え、実践していく。さらに特別活動や学校行事での取り組みでも、自己有用感や自己肯定感を育むねらいを念頭におき、日々の教育活動を行う。
(5) 児童生徒が自らいじめについて学び、取り組む方法として、道徳の時間や人権教育を通じて学ぶ機会を作っていく。また、いじめアンケートの実施から、いじめに特化した学びを深め、広めていく取り組みを実施していく。
3 早期発見
1 基本的な考え方
いじめの特性として、いじめにあっている児童生徒がいじめを認めることを恥ずかしいと考えたり、いじめの拡大を恐れるあまり訴えることができないことも考えられる。また、自分の思いをうまく伝えたり、訴えることが難しいなどの状況にある児童生徒が、いじめにあっている場合は、隠匿性が高くなり、いじめが長期化、深刻化することがある。
それゆえ、教職員には、何気ない言動の中に心の訴えを感じ取る鋭い感性、隠れているいじめの構図に気づく深い洞察力、よりよい集団にしていこうとする熱意のある行動力が求められる。
○(児童生徒が示す小さな変化や危険信号を見逃さないこと)
児童生徒が示す小さな変化や危険信号を見逃さないことが大切であり、教職員、特に日常多くの時間を共有している学級担任が、そのような兆候を見逃さないようにすることが大切である。しかし、担任だけでは多くの児童生徒を観察することは難しいし、担任が不在の所(休み時間等)で事案が起きている場合がある。そのため、全ての教職員が、全ての児童生徒に対して絶えず児童生徒が示す小さな変化を見逃さないようにする意識を持つことが大切である。担任も、自分が担任している児童生徒だけでなく、全ての児童生徒の様子を観察することが大切である。
○(教職員が積極的に児童生徒の情報交換を行い、情報を共有すること)
絶えず教職員が積極的に児童生徒の情報交換を行い、情報を共有することで、今後の対応方法について検討し、実施することができる。児童生徒の様子を観察することについても、様々な場面で関わる全ての教職員が意識して観察することができ、重大事案に至る前に状況に介入できることにつながる。情報交換の場については、定期的な学年会議の場や生活指導部会だけでなく、気になる様子等があったときには、職員朝礼をはじめ、すぐに職場で情報共有することが大切である。
2 いじめの早期発見のための措置
(1) 実態把握の方法として、定期的なアンケートは、全学年生対象のいじめアンケー
トを実施する。また、全校児童生徒を対象に生活アンケートを6月と11月に実施
する。定期的な教育相談期間を設ける。日常の観察として、授業時間はもとより児
童生徒との休み時間での活動にできる限り参加し、授業では見られない児童生徒の
様子の把握に努める。
(2) 保護者と連携して児童生徒を見守るため、児童生徒理解シートや家庭訪問、懇談会をもとに児童生徒の家庭環境や、家庭での様子を把握し、学校での様子や行動の観察から、保護者と連絡を取り合うようにしていく。また、保護者からも家庭での様子で少しでも変わったところがあれば連絡をしてもらえるように、日頃からの良好な関係づくりに努める。
(3) 児童生徒、その保護者、教職員が、抵抗なくいじめに関して相談できる体制として、まずは児童生徒からの相談に関しては担任を基本としながらも、授業等で関わりのある教職員や過去に担任だった教職員、そして生徒指導や養護教諭が窓口として挙げられる。特に養護教諭は児童生徒との関係からも相談窓口となりやすく、担任と共に重要な鍵となる。保護者からの相談に関しても担任を基本としながら、学年主任や生徒指導担当、教頭、養護教諭が窓口として挙げられる。教職員に関しても、まずは当該学年担任を基本としながら、従来からの生徒指導部会や「いじめ防止対策委員会」、教頭、校長への相談もあげられる。いずれにせよ、児童生徒や保護者にとっていじめに関する相談をしやすい体制を整え、誰が相談を聞いても学校として情報を共有し、しっかりと対応できるように努めていく。
(4) 学校だよりや地域への通信、各学級通信等により、相談体制を広く周知する。
「学校教育自己診断」、「学校経営計画」や「いじめ防止対策委員会」、「学校評価委員会」などでの確認により、基本方針の運営が適切に機能しているかなど、定期的に体制を点検する。
(5) 教育相談等で得た児童生徒の個人情報については、その対外的な取扱いについては、慎重に取り扱い、外部に漏れることのないように厳重に管理する。情報を開示するような場合は、必ず校長、教頭に相談し、「いじめ防止対策委員会」で検討した上で対応する。
4 いじめに対する考え方
1 基本的な考え方
いじめにあった児童生徒のケアが最も重要であるのは当然であるが、いじめ行為に及んだ児童生徒の原因・背景を把握し指導に当たることが、再発防止に大切なことである。近年の事象では、いじめた児童生徒自身が深刻な課題を有している場合が多く、相手の痛みを感じたり、行為の悪質さを自覚することが困難な状況にある場合もある。よって、いじめた当事者が自分の行為の重大さを認識し、心から悔い、相手に謝罪する気持ちに至るような継続的な指導が必要である。いじめを受けた当事者は、仲間からの励ましや教職員や保護者等の支援、そして何より相手の自己変革する姿に、人間的信頼回復のきっかけをつかむことができると考える。
そのような、事象に関係した児童同士が、豊かな人間関係の再構築をする営みを通じて、事象の教訓化を行い教育課題へと高めることが大切である。
2 いじめ発見・通報を受けたときの対応
(1) いじめの疑いがある場合、ささいな兆候であっても、いじめの疑いがある行為には、早い段階から的確に関わる。
遊びや悪ふざけなど、いじめと疑われる行為を発見した場合、その場でその行為を止めたり、児童生徒や保護者から「いじめではないか」との相談や訴えがあった場合には、真摯に傾聴し対応する。その際、いじめられた児童生徒やいじめを知らせてきた児童生徒の安全を確保するよう配慮する。
(2) 教職員は一人で抱え込まず、速やかに同僚や管理職に報告し、いじめ防止対策委員会と情報を共有する。その後は、当該組織が中心となって、速やかに関係児童生徒から事情を聴き取るなどして、いじめの事実の有無の確認を行う。
(3) 事実確認の結果、いじめが認知された場合、管理職が教育委員会に報告し、相談する。
(4) 被害・加害の保護者への連絡については、家庭訪問等により直接会ってより丁寧に行う。
(5)いじめが犯罪行為として取り扱われるべきものと認められるときは、いじめられている児童生徒を徹底して守り通すという観点から、関係機関(所轄警察署及び児童相談所、市教育委員会、福祉事務所等)と相談し、対応方針を検討する。
なお、児童生徒の生命、身体又は財産に重大な被害が生じるおそれがあるときは、直ちに須崎市教育委員会に報告し、適切な対応を実施する。
5 いじめられた児童生徒又はその保護者への支援
(1) いじめた児童生徒の別室指導や出席停止などにより、いじめられた児童が落ち着いて教育を受けられる環境を確保し、いじめられた児童生徒に寄り添い支える体制をつくる。その際、いじめられた児童生徒にとって信頼できる人(親しい友人や教職員、家族、地域の人等)と連携し、いじめ防止対策委員会が中心となって対応する。状況に応じて、スクールカウンセラーの協力を得て対応を行う。
また、該当学級のサポートが必要とされる場合は、サポートチームを発足させ、該当学級の支援を行う。
6 いじめた児童生徒への指導又はその保護者への助言
(1) 速やかにいじめを止めさせた上で、いじめたとされる児童生徒からも事実関係の聴取を行う。
いじめに関わったとされる児童からの聴取にあたっては、個別に行うなどの配慮をする。
(2) 事実関係を聴取した後は、迅速にいじめた児童生徒の保護者と連携し、協力を求めるとともに、継続的な助言を行う。
(3) いじめた児童生徒への指導に当たっては、いじめは人格を傷つけ、生命、身体又は財産を脅かす行為であることを理解させ、自らの行為の責任を自覚させる。
なお、いじめた児童生徒が抱える問題など、いじめの背景にも目を向け、当該児童生徒の安心・安全、健全な人格の発達に配慮する。
その指導にあたり、学校は、複数の教職員が連携し、必要に応じてスクールカウンセラーの協力を得て、組織的に、いじめをやめさせ、その再発を防止する措置をとる。
7 いじめが起きた集団への働きかけ
(1) いじめを見ていたり、同調していたりした児童生徒に対しても、自分の問題として捉えさせる。
そのため、まず、いじめに関わった児童生徒に対しては、正確に事実を確認するとともに、いじめを受けた者の立場になって、そのつらさや悔しさについて考えさせ、相手の心の悩みへの共感性を育てることを通じて、行動の変容につなげる。
また、同調していたりはやし立てたりしていた「観衆」、見て見ぬふりをしていた「傍観者」として行動していた児童生徒に対しても、そうした行為がいじめを受けている児童生徒にとっては、いじめによる苦痛だけでなく、孤独感・孤立感を強める存在であることを理解させるようにする。
「観衆」や「傍観者」の児童生徒は、いつ自分が被害を受けるかもしれないという不安を持っていることが考えられることから、すべての教職員が「いじめは絶対に許さない」「いじめを見聞きしたら、必ず先生に知らせることがいじめをなくすことにつながる」ということを児童生徒に徹底して伝える。
(2) いじめが認知された際、被害・加害の児童生徒たちだけの問題とせず、学校の課題として解決を図る。全ての児童生徒が、互いを尊重し、認め合う集団づくりを進めるため、担任が中心となって児童生徒一人ひとりの大切さを自覚して学級経営するとともに、すべての教職員が支援し、児童生徒が他者と関わる中で、自らのよさを発揮しながら学校生活を安心してすごせるよう努める。
そのため、認知されたいじめ事象について地域や家庭等の背景を含め児童生徒理解に努め、いじめに関わった児童生徒の指導を通して、その背景や課題を分析し、これまでの児童生徒への対応のあり方を見直し、良好な人間関係を再構築していくことができるよう適切に支援する。
8 ネット上のいじめへの対応
(1)
ネット上の不適切な書き込み等があった場合、まず学校として、問題の箇所を確認し、掲示板等のURLを控え、その箇所を印刷・保存するとともに、いじめ防止対策委員会において対応を協議し、関係児童生徒からの聞き取り等の調査、児童生徒が被害にあった場合のケア等必要な措置を講ずる。
掲示板等への誹謗・中傷等の対応について
(2) 書き込みへの対応については、下記の手順で対応していく。
○パソコンでのインターネット上のいじめについて
@「ネット上のいじめ」の発見
「ネット上のいじめ」に関する情報は、教職員よりも児童生徒や保護者、地域の方、卒業生の他、一般市民からの情報提供によることもあるため、以下の点に留意し、情報収集を行う。
→情報提供者本人から直接聞き取りを行い、必ず記録をとる。
→情報提供者の連絡先を確認し、情報源(情報提供者)の守秘を約束する。
A書き込み内容の確認と保存
書き込みがあった掲示板等のURLを控え、書き込みをプリントアウトする等して、内容を保存する。
→パソコンから見ることができない場合は、携帯電話から掲示板等にアクセスする。
→誹謗・中傷等の内容のプリントアウトが困難な場合は、デジタルカメラ等で撮影する。
書き込みの内容が緊急を要する場合(殺人予告、爆破予告、自殺予告等)は、関係機関に直ちに連絡する。
→犯罪にかかわるケース…警察(被害の児童生徒・その保護者から被害届)
→生活指導事案、人権侵害事象…教育委員会
B掲示板等の管理者に削除依頼及び開示請求
基本的には、被害の児童生徒が学校の協力を得ながら依頼及び請求を行う。(学校が代理で行うことはできるが、その場合には管理者への対応の情報提供となり、管理者に対応の義務を負わせることができない。)
→掲示板等のトップページを表示し、「管理者へのメール」や「お問い合わせ」の表示を検索する。
→該当箇所をクリックし、管理者にメールを送るページ欄に、件名、内容等の事項を書き込み送信する。(個人の所属・氏名等を記載する必要なし。)
C掲示板等のプロバイダ(掲示板サービス提供会社等)に削除依頼。
管理者への連絡先が不明や、削除依頼しても削除されない等の場合、プロバイダへ削除依頼を行う。管理者やプロバイダへ依頼しても削除されない場合、依頼メールの不備を点検後、メールを再送する。それでも削除されなかった場合、警察や法務局・地方法務局に相談する等して、対応方法を検討する。
○携帯電話やスマートフォンでのメール、LINE等によるいじめについて
@SNS等によるいじめの発見
携帯電話やスマートフォン等のSNS上の「ネット上のいじめ」に関する情報は、児童生徒や保護者からの情報提供によることが多くあるため、以下の点に留意し、情報収集を行う。
→情報提供者本人から直接聞き取りを行い、必ず記録をとる。
→情報源(情報提供者)の守秘を約束する。
A書き込み内容の確認と保存
書き込みがあった箇所を控える。誹謗・中傷等の内容のプリントアウトが困難な場合が多いと思われるので、デジタルカメラ等で撮影する等して、内容を保存する。
→書き込みの内容が緊急を要する場合(殺人予告、爆破予告、自殺予告等)は、関係機関に連絡する。また、書き込んだ相手が児童生徒でない場合も、関係機関に連絡する。
B書き込んだ相手に対しての対応
書き込んだ相手が児童生徒でない場合
→関係機関と連携し対応していく。
書き込んだ相手が児童生徒の場合
→相手が他校の場合、相手の学校と連携を取りながら、教育委員会とも連携し対応していく。
→相手が自校の場合、当該児童や保護者に聞き取りを行い、内容を確認し、書き込み内容を削除させる。その後の対応や指導については、他のいじめ事案と同様に行う。
(3) 情報モラル教育の推進については、情報教育担当者が中心となって年間計画を立案し、「いじめ防止対策委員会」で検討した上で学年の状況や発達段階に応じて実施していく。
(4)その他
過去の事例をみると、いじめの被害者が以前は加害者であったり、また、いじめの加害者が以前は被害者であったりすることがある。
特に以前被害者であった児童生徒が加害者となっていた場合、過去のいじめの被害者となっていた件についても丁寧に対応していく必要がある。グループ内で標的とされる児童生徒が代わっていき、とりわけグループ内のほとんどが加害者であり被害者であるという場合もある。
その点から考えても、未然防止に対しては、日頃の児童生徒の人間関係や学校生活の様子などをつぶさに観察していく必要がある。学校教育全般を通じて、コミュニケーション力の育成、規範意識(いじめはいけないこと)の醸成、「早やね・早おき・朝ごはん」などの生活習慣の確立、学力向上、人権教育を中心とした集団づくり、道徳に力を注いでいくことが重要である。
また、小学校高学年以上になれば携帯電話やスマートフォンに興味、関心が強まり、その所有率が高くなることから、これらに関連したいじめが多く発生する場合もある。今後は、情報教育や情報モラル教育を推進していくとともに、保護者への啓発も一層大切になってくる。学校と保護者、保護者同士の連携も図りながら、有効なコミュニケーションツールとして活用を促していく。